船長紹介
建築士資格を持ちながらゼネコン勤務を脱サラして、民宿、ウィンドサーフィンショップ経営を経て、釣り船の船長になりました。こだわりも異色でオニカサゴに惚れて惚れて惚れぬいております。なんとか1匹ということに対してはできるだけ頑張りますが、数釣りたいというニーズには応えていません。なぜならば、うちで狙うのは型にして2kg前後、20年も生きた尊敬に値する魚ですから。オニカサゴは成長に時間の掛かる魚で、1匹の価値が高い魚です。
この仕事の喜びは、タモ入れの瞬間と、その後の握手、そして記念撮影の3点セットです。それだけ1匹の魚の価値が大きいと私自身は思っております。オニカサゴは食べて最高、引きが強くて釣り味も最高と、最高尽くしの魚です。どうか、ゆったりとした人数限定の真澄丸で、感激と感動を満喫してください。
Fishing
盛川 宏 (釣りジャーナリスト)
”鬼”に狂っている船長さんがいるというので「そいつは面白い」と早速挑戦に及んだ。房総半島の先端・館山にいる船長さんは鬼、つまりオニカサゴとアマダイ釣りが専門だという。そういう人は珍しい。かなりの凝り性と踏んだ。案の定、船宿の壁には鬼の魚拓がずらり。それも半端な数ではない。猛烈に闘志が湧いてきた。洲ノ崎灯台と対岸の剣崎灯台を結ぶ海域。水深も130mと深い。サバの切り身を餌にして落とし込む。けれども一向に食いつく気配がない。「潮が止まって動かない。船が全然流れない」と船長さんもやきもきしている。何度も竿を上下して誘いをかけてやるのだが、餌盗りすらいないのだ。船の無線交信でも「潮がさっぱりだよ。全然動きやしねえ、朝からたったの1匹だけ」と心細い声ばかりが流れている。けれどもさすが鬼狂いの船長さんだ。ポイントをあちこちに替えてなんとか釣らせようと懸命である。
6人の釣り人たちもせっせと誘いをかけるのだが、それでもダメなのだ。5〜6回ポイントを替えたところは170mの深さ。ごくわずかだが潮が流れているようだ。船長さんの目論見はこの170mでずばり的中した。まさに今週の菊花賞なみの大穴が来たのだった。のんびりと置き竿にして早めの弁当を食べている時にそいつはやってきた。竿の先がガクッと震え、次にまたガク、ガクッ!だ。「しめた、オニだぞ!」と叫ぶ。弁当を放りっぱなしにして竿に飛びついた。「20mに来たら教えてよ」と船長さん。つまり170mからあげてくるのに時間もかかる。あと20mまであがったら玉網ですくうという意味なのだ。
ガク、ガク、ガクッといぜん止まらない。なにしろ船に取り込まれてもバタバタ暴れる元気者なのだ。
そうこうするうちにあっちでもこっちでも「来たぞ!」の歓声。一転して入れ食いである。海中を覗くと赤い魚体が見えた。すっぽりと玉網におさまったのは、1.5kgの良型オニカサゴである。オコゼともいうが本名はイズカサゴ。それを皮切りに船中で18匹はさすが鬼狂いの名に恥じぬ名船長ぶり。これにはシャッポを脱いだのだった。
橋忠船長のこだわり